1mmもNBAと関係のないAIの話

アレン・アイバーソンの話ではありません。人工知能の話です。それも介護業界における人工知能の話。

2018年現在、介護業界にまつわる流行のワードは、世間的なところでいうと「ICT」「介護ロボット」、そして「AI」だろう。一方で業界内はこういった先進的な取り組みについてそこまで盛り上がっていない。なぜか。

要は商売にすぐ取り入れられるほど、そこまで進歩していないということだが、ICTが発展途上ではあるもののアイデアはいろいろと出ているのに対し、AIはまだ実用性が見えて来ない。

AIが活躍する場、それ自体は見えている。ひとつは、介護保険サービスを利用するにあたり必ず必要とされるサービス計画を立てることだ。現在はケアマネジャーが計画を作成しているが、AIが作成するとなればケアマネジャーの人材不足を補えるし、業務のアシストになると考えられる。この計画や構想自体は何年も前からあるのに、パッケージングされたソフトとしてなかなか登場しない。

実は介護保険サービスの業務管理システムとして売られているものの中には、すでに計画書をAIが作成する、あるいは作成を補助するといった仕組みを搭載したものが一応ある。しかしその仕組みは、そのシステムのユーザーが作った計画書の集約をデータベース化し、そこから妥当なものを提案する、といったもので、精度としては非常に低い。うまく提案できて、「それっぽいことを言ってる」程度の内容だ。個別に利用者の身体特性や疾患、価値観、生活状況等を見て計画するものではない。開発会社いわく「今はまだ発展途上だが開発を続ける中で改善していきたい。ただAIというものは改善の速度が読みづらいため、いつまでにどうなると言えるものではない」とのことだった。まあ専門家が言うんだからそうなんだろうと思いつつ、「過去にケアマネジャーが作成した計画をデータベース化する」というそもそものスタンスが不安でならない。

というのもケアマネジャーも玉石混交で、能力や適性にはかなりのバラツキがある。それこそ機械がランダムに作った計画の方がまだまし、というレベルのケアマネジャーもいる。偏差を無視するにしても、ケアマネジャーというのは基本的に医療について無知である。質の高い介護計画を立てようとすれば医療やリハビリの知識が求められることが多いが、専門的な知識を持たないケアマネジャーが立てた計画に医療やリハビリの知見は生かされない。あるいはケアマネジャーはネットで医療情報を調べようとするかもしれない。ネットの不正確な医療情報を鵜呑みにして立てられた計画がAIの学習の参考書になり得るとしたら、非常に危険ではないだろうか。

厚生労働省は要介護認定の際の調査等のデータを蓄積しており、ビッグデータとして活用する準備があるというが、そうした統計からどこまでの情報が得られるのかという疑問がある一方、民間の不安いっぱいな取り組みを任せるまま進行させるより、正しい道筋を示せないものかと思う。

まあディープラーニングがどういうことかすら詳しくわからない程度の理解だから、踏み入ってあれこれとは言えないが、介護分野のぷち専門家として注意を喚起したくなるものである。

ちなみにもうひとつのホットワード、介護ロボットはアホっぽいので特に言及しない。パワードスーツ着て介護ってメジャーリーガー養成ギプスじゃないんだから…。